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「来てくれたんだ?」
「お前が変な電話かけて来るから眠れなくなったんでしょうよ」
玄関のドアを開けると、桂太は俺にクルリと背中を向けた。
俺はいつもと変わらないその背中に向かって、一通り悪態をついてやった。
「大体さぁ、お前んち時計っつーモンがないの?
今何時だと思ってんのよ? しかもピンピンしてるし、顔がおかしいって何なの? おかしいのは頭……え? お前、何? どうしたの?」
リビングのソファにふてぶてしく腰掛けて、そこに無造作に脱ぎ捨ててあったパーカーを羽織りヤツの顔を見た。
「何、花粉症?」
「いや……」
「そのサングラスは?」
「なんか異常に眩しいっつーか。蛍光灯が眩しくて、頭が痛いんだよね」
確かに電話で、目がおかしいだの口がおかしいだの言ってたけど。
振り向いたヤツが、家の中だというのにデカいマスクとサングラスを掛けていて、それを見て俺は嘘ではなかったのかなと考えた。
「どーしたのよ?」
「いやぁ……見る?」
「見るって?」
「笑わないでよ? っつーか逃げないでよ?」
「逃げる? 何、一体どーしたのよ?」
「どうしよう。見せちゃおっかなぁ…いや、やっぱやめよう…」
「うっさいわ! 何なの? 見せるなら早くして!」
いい歳してモジモジしてるヤツを一喝する。
すると「怖いよオト」とかなんとか言いながら、やっとマスクとサングラスを外した。
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