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「オト、悪い、サングラス掛けていい?」
「あぁ、消したら? 電気」
「うん……」
リモコンで部屋の明かりを落とすと、つけっぱなしのキッチンの明かりが間接照明みたいになって、桂太の顔が半分影になって映し出された。
陰影のついた頬は心なしか痩けた気がして、人相まで変わって見えた。
「ねぇオト? ……嫌いになる? 俺の事。
こんな気持ち悪い俺、嫌いだろ?」
さっきまでヘラヘラ笑ってたヤツが急に真顔になって、ソファに腰掛ける俺の足元を悲しそうに見つめていた。
「嫌いになんかなるかよ。
牙が生えたから嫌いになりますって人いる?」
「…どうかな、いるかも。だってキスできないじゃん、こんなに鋭い歯じゃ」
「ハハ! キスかよ? なんで基準がそこなのよ?」
「ダメ?」
「いや、ダメとかじゃないけど……
じゃあ例えばよ? ある日突然俺がそうなったら、桂ちゃんは嫌いになる? 俺の事」
「フフ、ならない。嫌いになんかならないよ」
「だろ? だから。俺だって同じだよ……」
こんな事言わせないでよ。
恥ずかしくて顔が熱くなって目を反らした。
俺の隣に座った桂太はようやく少し安心できたのか、「そっか、ありがとう」って、苦笑いだったけど笑っていた。
幼い頃から母親同士が仲が良くて、物心ついた時から当たり前のように隣にいた。
人生の半分以上、この人と一緒にいるんだよ?
だからどんな姿になったって、嫌いになる理由にはならないんだよ。
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