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「周ちゃん、私のこと好き?」
時は今ーー、周ちゃんとこんな関係を続けて半年が過ぎた頃、私は聞いた。
「・・・・・・いや。そもそも紗希が友達で居たいって言ったんだろ」
「そうだね」
いつの間にか、そうやって、周ちゃんは私のことを好きじゃなくなっていた。
特に身体の相性が良かったわけでもない私達。
別にお互いの事を好きなわけでも無く、それでもだらだらと一緒に居る意味。
ましてや周ちゃんは、私にお金を払って損をしているだけ。
「ねぇ、周ちゃんって、彼女作らないの?」
「うーん、単に出会いがないだけ」
「そうなんだ」
「なんで? 珍しいね、そんな事聞くの。俺に興味なんて無いと思ってた」
「無いこともないよ、別に」
思えば、周ちゃんとはあまり深い話をしてこなかった気がする。
食事に行ったり、買い物に行ったりはするから、なんとなくの好みや趣味は知ってる。
誕生日や血液型、年齢も知ってる。
だけど周ちゃんの女の子の好みや、今までどんな子とどんな風に付き合ってきたかは、あまり良く知らない。
だって、周ちゃんは私のことを好きだと思っていたから。
ただ、それは間違いなんだと、今になって気付いた。
周ちゃんが好きだったのは、お店にいたキャストの「紗希」であって、本当の私じゃない。
今じゃ、お風呂に入る私に「もったいない」なんて言わない周ちゃん。
私に「大丈夫?」などと、優しい言葉も掛けてくれなくなった周ちゃん。
「ねぇ、私に彼氏出来たらどうする?」
私が突拍子もなくそんな事を尋ねると、周ちゃんは「出来たの?」と淡々と聞いてきた。
「出来てないけど。例えばの話」
「どうもしないよ、別に。紗希に任せる」
明日突然私が居なくなってしまっても、きっと周ちゃんは、いつもと変わらない日常を送れるんだろう。
何故か私は、昔の必死になってしてきた恋愛を思い出した。
明日この人が居なくなってしまったら、生きていけないかもしれない。
その人だけが私の全てで、四六時中その人で頭がいっぱいで、喧嘩しては仲直りするまで悩み続けて、バカみたいに依存してーー
だけど私も、明日周ちゃんが居なくなっても、普通に生きていける気がした。
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