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「突っ込みどころは満載だけど、金で紗希と出来るなら、俺は金払っても良いけど」
「そういうもん?」
「俺はね」
この時抱いた感情は、よく覚えている。
ずっと私を好きだと言って、付き合う気も落とす気も満々だった周ちゃんが、私をお金で買うと言った。
お金がある人間というのは、人の心までもお金で買おうと思うのだろうか。
それとももう、私の事は好きじゃないのだろうか。
私がお金に困っているように見えているのだろうか。
私が言い出したことなんだから、私がどうこう思うのは違う気がする。
だけど、あんなに熱心にお店に通っていた周ちゃんにとって、私の身体は現金と引換に出来るものだということは、なんだか衝撃的で虚しかった。
「いくらなら出せるの?」
さて、私の価値はいくらなんだろうか。
「2万」
「2万?」
「そこらのソープ行くより高いんだから、妥当だろ」
「そっか」
私は別に、お金を貰わなくたってセックスをする。
だけど、周ちゃんとなら、1回すれば2万手に入る。
2万というのが、どれ位の価値なのか、私にはいまいち分からなかったけれど、タダでもセックスをするんだから、2万を貰えるならば、それなりに価値は高いのかもしれない。
年頃になった頃に言われたことを思い出した。
「自分の身体をお金で売るのはやめなさい。お金で代えられる程、身体は安くないのだから。身体と言うのは、値段をつけられるものじゃないのだから」
誰に言われたわけでも無い気がする。
世間がそんなことを言っていたような気がする。
だけど今、私の身体には、2万という価値がついた。
ソープよりは高いらしい。
「百万とかじゃないんだ・・・・・・」
「そういうのは、身体を売る気が無い人が言う言葉だよ」
周ちゃんが困ったような素振りを見せた。
困ったというよりも、呆れているだけなのかもしれない。
「私、身体なんて売ったことないよ」
それは、越えてはいけないラインだと、自分で思っていたんだ。
ねぇ周ちゃんは、私の事を好きなんだと思ってた。
手に入れたいんだと思ってた。
お金じゃなくて、気持ちで手に入れたいんだと思ってたんだけどな。
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