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「そう、その子は人間違いをしてるのよ!!」
ドパンっと無駄に大きな音を立てて部屋のクローゼットが口を開く。
開いたクローゼットの中から姿を現したのは、異世界の人っぽい感じの人ではなくて、現実世界のどこにでもいそうな極めて普通の、なんてこと無い普通の妹というありふれた存在である。
「お兄ちゃん! あたしに黙って女を連れ込むなんて酷いじゃない!!」
藤原 鈴奈(ふじわら れいな)。僕の妹であるが、何かがズレているのはお分かり頂けるだろうか?
コイツのズレが、先述した僕が今まで寂しい学校生活を余儀なくされてきた原因の98%であり、残りの2%もコイツが原因なのだから笑えない。
鈴奈が壊れているのは基本的には僕に関する事だけであり、その他の事に関して言えば完璧なのだ。
兄の色眼鏡と言う訳では無く、家の家事はほぼ全て完璧にこなし、近所の評判もすこぶるいい。
学校での勉強はいつもトップクラスだし運動に関して言えば、何をやらせても右に出るものはいない程の成績を叩き出してしまうなどなど。
そう、あまりに完璧すぎるこの妹がベッタリと僕にくっついているおかげで、他の女の子が寄ってこないのだ。
オートで発動する鈴奈フィールドがある限り、僕に甘い未来は訪れないのは明白だ。
「鈴奈、これはお前がどうこう言う問題じゃあ無い。さっさとこの部屋から出て行く事をお勧めする。」
「出て行ってもいいけどその前に……」
そう言って俯いた鈴奈の顔を前髪が覆い、その表情はしっかりと伺う事は出来ないが、口元にはニヤーっと妖しい笑みが浮かんでいるのが怖い。
多分なのだが、その瞳には更に妖しい光が灯っているに違いは無い。
ギシッと音を立てて鈴奈は僕のベッドに乗り、猫のように四つん這いでジリジリと距離を詰めてくる。
尚も彼女の表情は分からない。分からないが、やろうとしている事はそこはかとなく漂う妖しい雰囲気が教えてくれている。
「ね、お兄ちゃん。あたしにも……して?」
スッと顔を上げた鈴奈の瞳には妖艶な、それでいて幼さを感じさせる妖しい光が宿っていた。
しまった!!
いつもこうなのだ。鈴奈の瞳の光に魅せられると、体の自由が利かなくなる。
それどころか、頭の中さえも霧がかかったようになって……
気を、付けて……いた、のに……。
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