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「兄妹……だぞ? 鈴奈は何をしようとしてるのか、ちゃんと分かってるのか?」
眼前に迫る妹が、狂気染みた僕の妹が、どうしてこんなに可愛く見えるんだ!!
頭では否定しながらも、僕の体の僕の男の子の部分は既に臨戦態勢に入っている。
正直な話、ここだけの話ではあるのだが、僕の妹は可愛い。その辺のアイドルなんかよりも可愛い。
そんな妹が、半裸で迫って……
「って、さっきまで装備してた布製品はどこやったんだよ!!」
「だって、邪魔でしょ?」
邪魔でしょ?ってサラッと言い放つ妹はなんだかとても大人に見えた。
そしてその一言で、今まで抗ってきた自分が馬鹿らしくも思えてきた訳で、いっそこのまま流れに身を任せてみるのもいいのかな。
なんて堕落した考えが頭の8割を占め始めたその瞬間だった。 僕の右腕が、再びの感触を頭に訴えかけたのだ。
柔らかくて温かくて、それだけで幸せを感じさせてくれるその感触が、堕ちかけていた僕の理性を優しく呼び起こしてくれたような気がした。
そしてその幸せの持ち主は、空色の瞳をしっかりと開けて鈴奈を真っ直ぐに見つめている。
いや、むしろ……
「魔法……しかも、かなりタチの悪いやつですね。 エリナ姉様は酷いです。こっちの世界で龍樹くんを独り占めにしているにも関わらず、そこまでするんですね。」
睨んでいると言った方が、この場合正しいだろう。
しかし、彼女の言ったいくつかの単語が僕の理解を超えて頭をすり抜けていく。
いや、実のところは物凄く気になっているのである。めちゃくちゃツッコミたい。そうしたいのはやまやまなのであるが、今の僕を取り巻く空気がそうさせてくれそうにもない。
何がって?
先に話した通り、僕に関する事では別人のように変貌してしまう鈴奈の前で僕の腕を抱き込んでいるというこの状況。
青髪の子が言ってる事は良くは分からないが、鈴奈の怒りが膨れ上がっているのは手に取るように良く分かる。
この状況を他人から聞いたんなら、夢でも見たんだろ?って言える。
しかしながら、この状況は残念な事に夢でもなんでも無い。
生々しくて耐え難いリアルな現実なのである。
「イレーナ、あんたは……」
小刻みに震える鈴奈の唇から零れたのは彼女の名前……?
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