『夜明け』

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 相澤は駅の周辺は混んでいるといい、一旦、遠回りだが高速道路に乗ってから港へ向かっていた。野中の家の前に行くと、野中は店用の駐車場を一個空けていてくれた。 「ありがとうございます」  兄の野中が出迎えてくれたが、潤哉も横に立っていた。潤哉とは、同じ高校のサッカー部であった。  地下の部屋に降りると、潤哉と双子の久哉も寛いでいた。 「野中先輩、これが基板です」  静電気防止の袋に入れてきてはみた。  野中は手袋をはめて基板を確認すると、既にバラしてあった端末にセットしていた。 「ああ、中身が見えるね」  中身のデータを画面に出して貰うと、大量の顔写真と名簿のようなものがあった。  他に試験の日付が記載されたリストと、人の名前が記入してある。そこに、合格、不合格などの記載もあった。 「替え玉?試験」  資格試験で、替え玉をしているリストであるようだった。申し込み金を払い、合格通知が来たら代金を払う。受験などと違い、資格試験は確認がそう厳しくない場合も多い。でも、資格により待遇が異なるなどもあり、皆、欲しがるものなのかもしれない。  代金の振り込み先を見ると、四区にある銀行であった。名義を見ると、不正行為で有名なチームのものであった。四区が仕切っているのならば、俺にとってはそう問題はない。 「隠しファイルもありますね」   見られないように隠していても、野中は簡単に見つけていた。  隠してあったファイルを開くと、可愛い女の子の写真が大量にあった。どれも十代前半のもので、小学生にも近い。でも、須賀も中学生であったので、年齢に問題はない。  好きな女の子の写真を隠していたのかと、ファイルを閉じようとして首を傾げた。  画像のデータがバラついていた。古くは十年も前のものがある。須賀は十年もコレクションしていたのだろうか。すると、幼稚園からのコレクションになる。インターネットで拾ったにしては、データの容量が大きすぎる。  フォルダーの中に、まだ何か隠しているので開いてみると、再び大量の画像データがあった。  日付毎にファイルになっているが、ほぼ毎日写真や動画が撮られていた。しかも、時間を見ると、日中や夜中もあった。
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