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他に、景色はないが天気が分かる。その日、晴だった雨だったで、地区も少しは分かる。
「天候は俺が調べます。それと、このデータ、もっと詳しく見てみます。他にも何かありそうです」
野中の横に、野中家の小学生の弟達も来ていた。画像はいい遊び道具になっている。
「野中先輩、ホーに請求は止めてもらえませんか?」
野中への報酬は、ホーが支払っている。
「いいえ。印貢君に支払わせたら、ホーさんが契約を打ち切ると言っていまして。久哉の学費になっているので、それは困る」
久哉は、私立に進んでいた。征響とサッカーがしたかったのだ。
でも、支払いがホーなので、情報がホーに筒抜けになる。ホーは、かつての同居人で、母の恋人であった。ホーは俺を可愛がってくれていて、養子になれとまで言ってくれる。
「印貢君は、潤哉と久哉と、屋上でサッカーでもしていてください」
そうは言われたが、俺もここに越して来てから三年経過するが、あまり港には来ない。物珍しさから、港をジョギングすることにしてしまった。
「一緒に走りますよ。案内します」
潤哉は走りたくなさそうであったが、久哉は笑顔になっていた。
「印貢、俺たち、毎日一緒に走っているのに、まだ走りたいか」
走りたいではなく、大きな港が珍しいのだ。
走り始めると、久哉よりも潤哉の方が、案内していた。
「港もさ、人間が普通に入れる所が少ないのよ。危険だしね」
でも、大きな船が幾艘も見えた。潤哉は、高台に登ると、港の光で倉庫などの名前を説明してくれた。
「有名どころの倉庫があって、船は倉庫にそのまま着く」
倉庫からトラックが出入りする。
全体の位置を把握させると、又、走り始める。倉庫は一軒でも、とても大きく、ずっと同じ景色が続く。だから、港を走るのはそう楽しくないと、潤哉が呟く。
「そうか。じゃ、今度、俺の家に泊まりに来いよ。参道だから、人がいて思うように走れないけど、景色は目まぐるしく変わる」
「……久芳先輩もいるのでしょ」
久哉は征響に憧れて私立に来たが、その怖さまでは知らなかった。
「まあ、兄弟だからね」
俺は印貢で、征響は久芳と名字は違うが、兄弟ということになっている。本当は、俺の母は久芳家を離婚して飛びだし、息子夫婦の代理出産をしてしまった。血縁上では、征響は俺の叔父になるらしい。
「でも征響は母屋にいるからさ。そんなに会わないよ」
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