58人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、船が入ってきた」
港地区は、四区と隣接しているが四区ではない。四区の人間が多く働いているので、港地区の人は四区には詳しい。
俺たちは、自販機で飲み物を購入すると、船の見える場所で休憩することにした。そこは空き地になっていて、どこかの会社の所有地であった。ベンチが置いてあるので、何も植えられていないが休憩所なのかもしれない。ベンチには灰皿も用意されていた。
船がゆっくりと接岸してくるのが、正面に見えていた。かなり暗くなってきたので、あちこちに光が灯る。
「殺された中学生、私立のサッカー部だったろ?」
天神区は、学校は四区になるのだが、皆私立の一貫校に通っていた。
「そう、須賀」
久哉が思い出したのか、頷いていた。一貫校なので、中学生とも練習しているという。
「須賀は妹が行方不明になっていて、どこかで生きていると確信していた。だから須賀は、幼い下の妹たちが又いなくなると心配して、捜査していた」
どうして須賀は、妹が生きていると確信していたのだろうか。
守っていた須賀がいなくなってしまい、下の妹たちが危ないのではないのか。
「兄さんに電話しておこう」
まだ証拠は何もないが、画像の件を佳親に説明した。佳親は、替え玉は知っていたが、子供を拉致して育てているとは知らなかった。
天神区の子供は、私立の一貫校に進む。学区は四区になるので、非常に危険でもあるので、迷いもせずに全員が幼稚園から私立に通っていた。
でも、天神区も裕福な家庭ばかりではい。須賀の家も、子供を私立に通わせるだけの余裕は無かった。かといって、四区は犯罪地区であり、子供だけが通うのは無理があった。そこの住人でさえ、子供は送り迎えしている。
そこで、須賀の家族も天神区から引っ越ししてしまえば良かったのだが、そのまま住み、金のために犯罪に手を染めてしまった。
天神区の殆どが、須賀の両親は四区と組み何か犯罪で稼いでいると疑っていた。佳親は、その証拠も掴んでしまったが、サッカーをする須賀少年を見て、何もできなかったという。
「弘武、天神区には見守っている人もいる。又、行方不明は出さないよ」
佳親は、画像データを寄越せと言うが、俺は港をジョギング中だと断った。
「野中の家の、潤哉と久哉も一緒に走っているよ。港の夜が綺麗で驚いた」
佳親は、深入りするなと心配していた。
最初のコメントを投稿しよう!