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再び走り、野中の家に戻ると、地下の部屋では、マイペースで作業がされていた。
野中は画像を分析し続け、相澤は寝転んで天井を見ていた。でも、よく見ると、相澤は天井に映像を映してみていた。
俺は、相澤が何の映像を見ているのかと、立ったまま天井を見る。相澤は行方不明の少女と、端末にあった少女の顔をひたすら見比べていた。
こんなに沢山の行方不明者がいたとは、俺も知らなかった。
「相澤さん、言い難いのですけど、行方不明者は美少女に絞りましょう」
酷なようだが、端末の少女はとても美しかった。
「美少女という基準が曖昧で判断できない」
そこは、感覚でいいのではないのか。好みというものもあるが、端末には正統派の美少女が多かった。つまりは、何もしなくても美しい少女であった。
「では行方不明の写真から、俺がピックアップするので、相澤さんは比べてください」
相澤は目を閉じて、何か考えていた。
「俺は、基板の少女の全員が印貢に見えた。つまりは、印貢に見える奴を捜せということか。俺がピックアップ、印貢が見比べする」
それでもいいが、この天井を寝転んで見ていたら、三分で爆睡してしまう。
「潤哉。久哉。画面を貸して」
夕食をトレーで持ってきた潤哉は、そのトレーを俺に渡した。
「印貢、夕食を一緒に食べよう。それで、画面を持ってくるからさ。待っていて」
今日はカレーにパスタ、そしてカリフラワーのサラダ、チキンのスープであった。カレーとパスタが両方あるのが珍しい。
潤哉は、再びトレーを持ってくると置き、奥からプロジェクターを持ってきた。
「相澤さんは、自分で夕食を持ってきてくださいね」
相澤が冷たいと言うと、笑った野中の弟の一人が相澤にトレーを渡した。
「主に主食だな。でもおいしそう」
カリフラワーのサラダではなく、酢漬けであった。ピクルスもあって、子供が弾いていた。
「では、見比べながら夕食」
食べながら、似ているだの他人だの、ヤジを飛ばす。でも、幾人かこれは他人ではない、本人ではないのかという画像があった。
両親の画像と合わせると、大きくなった顔が想像できる。姉妹の写真もあると、かなり確定できた。
「この数……」
須賀が口封じされるだけの、確証が出て来ていた。
第三章 若紫
野中の家で夕食が終わる頃、ファイルにあった少女の身元は全て判明していた。しかし、須賀の妹はいなかった。
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