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野中が画面を切り替えて、こちらに映像を流してくれた。そこには、少女を育成してゆくゲームが映っていた。でも、これは実際の人間を育成している。
監禁されている様子が映されていて、餌、風呂、遊ぶなど幾つもの項目がある。それにお金を投入すると、実際に食事などが運ばれてくるのだ。
少女達はお腹が空いているのか、食事が欲しいために、歌をうたってみたり、踊ってみたりとリクエストに応えていた。
「クソ野郎」
この映像を見て喜んでいるのか。反吐が出る位に陰湿であった。
「相澤さん!」
「分かっている!」
こんな犯罪者を、捕まえない警察ならばいらない。
「印貢、悪いけど泊まりはなしだ。俺は捜査に入る。家に送ってゆく!」
相澤が立ち上がってドアに向かう。俺は、サイトの情報を家に送る様に、野中にそっと目配せする。野中は、分かったと軽く手をあげた。
「印貢、独自の捜査はするなよ」
相澤は、田舎の少年のような顔をしているが、刑事であった。こうやって釘を刺す表情などは、とても怖い。でも俺は、やはり首を突っ込んでしまうのだ。
俺は家に戻ってくると、そっと部屋に入った。相澤が車で去ってゆくと、佳親と征響が俺の部屋にやってきていた。
「何か、分かったのか?」
天神区の子供を殺されているので、佳親も他人事ではないらしい。
征響も同様で、須賀が何を追っていたのか知りたがっていた。
俺が野中から貰った情報を見せると、佳親は腕を組んで唸っていた。
「育成ゲームなのか……」
でも、人間でやっていいわけがない。
「服で特定しようとしたのか……」
他に特定できるものがなかったのだ。でも、ゲームを見ると、食材が気になった。しかも、この人数を監禁できる場所など、かなり限られているのではないのか。
「……この部屋数に少女が住んでいても、通報されないなど、探すまでもなく四区のどこかだよ」
でも、四区のどこかで括るしかない。隣接している天神区でさえ、四区の中は自由に歩くことができない。
「将嗣には言ってみる。多分、近いものは把握しているだろう」
四区はこれを、犯罪とはしていないのであろうか。少し冷静になって佳親を見ると、佳親は渋い顔をしていた。
俺が今度は征響の顔を見てみると、征響は俺よりも怒っているようであった。
「須賀は、どうして相談してくれなかったのだろう」
征響の怒りは、須賀が自分に相談しなかった事なのか。
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