『夜明け』

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 須賀もきっと相談はしたかったと思う。でも、相談できない何かもあった。 「……須賀の両親は関係者なのか」  須賀の父は大工だと言った。もしかして、この部屋を作ったのかもしれない。須賀の母親は仲居で、この少女達の世話をしていたのかもしれない。  須賀は、天狗であることが誇りであった。でも、両親のせいで、天狗を追い出される可能性があった。  須賀は、自分は口封じで殺された、捜査に誤りがないようにとメッセージを残している。きっと、捜査はして欲しかったはずだ。 「分かった。須賀の周囲を洗う」  佳親と征響は、須賀の通夜に行くという。俺も行くと言ったが、断られてしまった。同じ地区なので、全員が行ってもおかしくないであろう。 「葬儀には来い」  葬儀には、天狗が全員揃い行くという。  では、やはり明日はオフになったので、湯沢と買い物に行ってみよう。そんな気分ではないとも思ったが、家に一人でいたくもない。 「おやすみ、弘武」  佳親と征響が、母屋に帰って行った。  時計を見ると、かなり深夜になっていた。俺は、布団を敷くと潜りこむ。その時になって、藤原から電話が掛かって来ていた。  電話に出ずに眠ってしまいたかったが、仕方なく電気を付けると、出ようとした電話が切れていた。  又、電気を消して布団に入ると、再び電話が鳴っていた。もう無視して眠っていると、窓を叩く音がしていた。  藤原なのかと起き上がり、窓のカーテンを開けると、そこには須賀が立っていた。 「印貢先輩。事件を追ってくれてありがとう。妹をお願いします」   須賀が、俺に頭を深く下げて消えて行った。  そうか、須賀は天狗の誇りを守ったのではない。両親を失うかもしれない妹を心配していたのだ。 「そうか……」  では、警察ではなく四区の裁きに任せるしかないのか。でも、これは犯罪であるので、やはり法律に任せたい。  須賀も、何度も幽霊になって来てくれるが、こんなにくっきりと見えるものであったのか。ぼんやりと映っているだけの、心霊写真とは違っていた。  又電話が鳴ったので、仕方なく取ってみると藤原であった。  電話にため息をつくと、再び布団に潜る。 「印貢、何、そのため息」  俺を印貢と呼ぶということは、藤原の周囲には人がいる。 「彼女がまだいるでしょ。こんな電話を掛けていると怒られるよ」  電気を消すと、電話を切ろうとする。
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