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店舗に入りエスカレーターに乗ると、ガラス貼りになっていて、横を走る車が見えていた。
ここでは、靴の紐だけで、数千という種類が用意されているともいう。
該当の階に降りると、その種類に驚きながらも、あれこれ選んでしまった。
「脱線事故に巻き込まれなくて良かったね」
怪我をしなくて、本当に良かった。
「印貢、家に電話をしなくて大丈夫?」
そうか、季子が心配しているかもしれない。
「あ、しておく」
俺が店の端で電話をしていると、エスカレーターを登ってくる沢山の人が見えていた。
「季子さん、俺、無事に店で買い物しています」
希子の電話が留守電になっていたので、伝言を入れておく。季子は、接客中なのかもしれない。
「印貢、二号館に、おいしいラーメンがあるってよ」
湯沢は何か検索して調べていたらしい。
「あ、行く」
港駅は、この店の正面にある。乗り換えの駅のせいかかなり大きく、人も激しく出入りしていた。
その駅の正面掲示板に、脱線事故の様子が流れていた。まだ、復旧の見込みはない。
でも、何故脱線したのか分かってきたようで、線路に鉄骨が落ちていたという。
「鉄骨?」
鉄のブロックで、急ブレーキをかけた電車はブロックに激突し脱線した。
「事故、なのかな」
とりあえず、食事をしてから、又、買い物の続きをすることにした。店舗が広いので、選べるのはいいが、探すのに時間がかかる。しかも、靴のメンテナンスを依頼したら、番号札を渡されていた。待ち時間を見ると、一時間もあった。
連絡通路を渡ると、食堂街に行く。見つけたラーメン店は、長い列ができていた。
「これ、待ち時間が凄いね……」
あまりに長い列であったので、外にあった定食屋に入る事にした。
「印貢。靴が壊れたの?」
「ああ、それもあるけど。バスケシューズを手放してきた。ここ中古の引き取りもあるからさ。その資金で、新しい靴を購入してきた」
サッカーシューズは、一足しか持っていなかったので、少し不便であったのだ。
「バスケシューズ、手放したのか……」
履かないのならば、手放した方がいい。バスケシューズは、飾るものではなかった。
「もう、履かないしね」
定食屋も混んでいたが、ラーメン屋程ではなかった。しかも、店舗の外であるせいなのか安かった。
定食を食べていると、前の店からバラバラと人が出てきた。どうも、中で事故があったらしい。
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