第一章 消える景色

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「湯沢、帰ろう」  今度こそ、きっちり帰ろう。 「分かった」  湯沢もフェンスを飛び越えてきた。  私立の一貫校は、天神の森駅までバスを運行している。 路線が異なり通えない生徒が多いので、最寄りの駅まで巡回バスを走らせているのだ。 そのバスには、公立高校の俺達は乗る事ができない。  俺は、自転車で天神三区を抜け、四区を抜けて天神区に帰る。 天神区は、天神の森と呼ばれる山の上の地区で、有名な寺社が連立している。 参道を下ると、天神の森駅となっていた。  俺の家は、参道にある古い漢方薬局であった。 湯沢はその隣の、老舗の漬物店の息子だった。
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