第一章 消える景色

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 俺は、倉庫の三階に住んでいる。 ほぼ一人暮らしであるので、最近まで気ままに生活していた。 でも、サッカーをするようになって、随分と母屋に行くようになった。  母屋は、生活道路を隔てて向かい側になる。 「いいよ。練習しよう」  真面目な湯川は、練習も勉強も手を抜くことがない。  母屋の庭で練習していると、玄関に誰かが訪ねてきていた。 「季子さん、お客さんですよ」  玄関のチャイムは、漢方薬局の方でも分かるようになっている。 でも、誰も来ないので、俺が玄関に出てみた。 「どなたですか?」  玄関を開くと、参道の旅館で働く奥さんが来ていた。 やはり、季子を呼んだ方がいいのかと、玄関の電話を手に取ると、 湯川が来て丁寧に挨拶していた。
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