第一章 消える景色

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「退院されたのですか?」  退院?後ろの少年を見ると、前にこの庭で撃たれた中学生であった。 「退院したのか。おめでとう!」  電話を置いて、俺は中学生と握手していた。  この庭で狙撃された時は、もう心臓の鼓動が止まりそうであった。 それが、今、生きて目の前に立っている。 「退院はしたのですけど、もう天狗はできません。 心臓を掠っていたし、肺を貫通していましたので、無理ができません」  本来ならば、久芳を恨んでもいいのだろうが、少年は明るい笑顔であった。 「生きていられて、本当に嬉しいです。 征響さんに電話をしたら、運動はできなくても、一緒に勉強をしようと言われました。 勉強をしに、又、ここに来るつもりです」  怪我で仲間を失うということは、本当に悲しい。
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