第十四章 空き地の空(あきちのそら)

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 ビンにはラベルと日付が貼られていた。 中に浮いているのは、何なのか分からない。 密封状態が悪かったのか、液体が無くなり、ミイラか干物になっているビンもあった。  ここの病院で、隠さなければならない標本となれば、これは胎児であろう。 「……見事に兎人ですね」  長い耳の人間の胎児であった。角が生えているものもある。  俺が手を振って隠していたので、名護は俺の手を取って拳に消毒液を塗ってくれた。 「殴るのは、藤原先輩の十八番でしょう。慣れない事はしないでください」  しかし、名護はいつも薬など持って歩いているのか。 「その薬は、いつも持っているの?」  名護は、自分の手をみて首を振った。
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