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「なによそれ。そんなのあてにならないじゃん」
「いやいや、そうとは限らないぞ。そういうところから意外な発見があるかもしれない。話だけでも聞いてみたらいいんじゃないか?」
言いながら、磯貝は二人の背後に立った。
「ちなみに、それを書いてるのはどんな人だ?」
小杉は画面をスクロールさせてから、
「えっと、小鳥遊秀介って人で、肩書きは……」
「おい」と磯貝は肩を掴んで話を遮った。
「今、タカナシシュウスケって言ったか?」
「ええ。言いました」
「それって、小鳥が遊ぶと書くタカナシか?」
「そうですけど、まさか磯貝さん、知ってはるんですか?」
「大学時代の友人と同じ名前なんだ」
磯貝は小杉の肩越しに液晶画面に顔を近づけ、プロフィール欄に目を凝らした。
「同い年で、同じ大学だ。あいつに間違いない」
「奇遇ですね」と驚く栗田に続き、小杉が興奮した様子でディレクターを振り返った。
「これって、なにかの啓示とちゃいますか?磯貝さんの言うとおり、この人の話を聞いたら、どえらいネタにぶつかったりして」
鼻息を荒げるADに「あぁ」と彼は相槌を打ってから、
「そうだな。久しぶりに一度、個人的に連絡をとってみるか……」
三日後。
磯貝は栗田を伴ってとある喫茶店にいた。小鳥遊との待ち合わせだ。
相手が到着するまでの間、二人は雑談を交わす。
「へぇ。ヨウちゃんって山岳部だったんだ」
栗田の発言に、磯貝は眉をひそめた。
「おい。二人きりだけど今は仕事中なんだからな。その呼び方はやめろ」
「いいじゃない別に。誰も聞いてないんだから。第三者が来たらちゃんとするわよ」
反省の色も見えないその物言いに彼はため息混じりに話を続ける。
「そう。大学で俺と小鳥遊は山岳部だった。こう見えて、結構有名な山にもいくつか登ったことがあるんだぞ」
「例えば?」
「マッターホルンとかキリマンジャロとか」
「すごぉい」と栗田は羨望の眼差しを彼の横顔に向ける。そこには誇らしげな笑みが浮かんでいた。
「でもなんで今まで話してくれなかったの?」
「もう昔のことだからな。それに、卒業と同時にきっぱりやめちゃったし」
「ふーん。なんでやめちゃったの?続ければよかったのに」
何気ない栗田の質問に磯貝は顔色を変えた。
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