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キッチンからはニンニクの芳ばしい香りが漂ってきた。
我が作田家のシェフは、先程から器用にフライパンを振っている。
そんな彼の額には、とある理由から熱さまし用の冷却シートが張られていた。
一方、私と有紀のアラサーコンビといえば、美少年シェフのエプロン姿をつまみに、昼間っからワイングラスを傾けていた。
自分でいうのもなんだが、かなりのダメ人間っぷりである。
「ねえ……あの子、今度貸して」
「あんた、なにいってんのよ。ダメよ、そんなの」
「ケチ、減るもんじゃないんだからいいじゃないよ」
有紀は唇を尖らせながら、グラスに白ワインを注ぎいれた。
ごめんね、悪いけど青は私の専用機なのよ。
それにツタヤのDVDじゃないんだから、レンタルなんて出来ないのです。
ふて腐れる親友をよそに、私は心の中で静かにほくそ笑んだ。
それにしても、さっきはどうなるかと思ったけど……最終的には全て丸く収まってくれた。
結果オーライ、というやつである。
私はそんなことを思いつつ、ワインを傾けながら先程の一波乱を思い起こした。
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