青と葵

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「作田さん、小鳥遊家のことはご存知ですよね?」 「ええ、まあ……」 「私の雇い主は小鳥遊家の現当主、小鳥遊(たすく)です。そして貴女がいま一緒に暮らしている少年こそが、彼の息子である小鳥遊葵です」   あの青が大財閥の当主の息子? 突然の現実離れした話に言葉が出てこない。 頭の中の警告ランプが、ぐるぐると回りだす。思考力は完全に停止状態だ。 「あのう……冗談ですよね」 「冗談をいうために、貴女を誘ったと思いますか?」   川崎さんの真剣な眼差し――嘘をいっているようにはみえない。 あの日、男にフラれべろべろに酔っぱらった私は一人の少年を拾った。 名前は青、苗字はまだない。あるじゃないの、すっごい苗字が……あの大嘘つきめ。 すっかり冷めてしまったエスプレッソを見つめながら、私は心の中で呟いた。
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