博多女の心意気

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うーん……あれは流石にまずかったなあ。 後先考えずに行動に移すこの性格は、相変わらず健在なようだ。 正直いっていまの私は、相当に危機的状況にある。 絶対怒ってるよだろうなあ……ああ、マジでどうしよう。 私は地下鉄に揺られながら、小さく溜め息を漏らした。 そして溜め息の原因となった出来事を、瞼を閉じながら思い起こした。   青が有名財閥の御曹司。その事実はおおいに私を動揺させた。理由は自明だ。 なんせそのお坊ちゃまを私はこの手で……これはまずい。 いいや、まずいってレベルを遥かに超えてる。   どうすんの? ねえ、どうすんの奈々っ!  どうするっていわれてもさあ……こればっかりは、どうしようもないっしょ。 いやいや、開き直らないでちゃんと考えなさいよっ!  考えても無理なもんは無理っ! だってあの子としちゃった事実は消えないんだから。 たしかにそうだけど……私が無言のまま脳内会議を繰り広げていると、川崎さんは静かに口を開き始めた。 「祐氏の息子といっても、葵君は正妻の子ではありません」 「えっ、というと?」 「ようするに ”外で出来た子” ということです」 川崎さんは声のトーンを落とすと、静かに私を見つめてきた。 青は小鳥遊家の当主が、愛人に産ませた子らしい。 テレビドラマなんかではよくある話だけど、実際に聞くのは初めてだった。
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