博多女の心意気

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「青……じゃなくて、葵君はどうして家出をしたんですか?」 「小鳥遊家の長男である時生さんが、飛行機事故で亡くなったのはご存知ですか?」   そういえばこないだテレビで葬儀の中継がされてた。 たしか事故から数週間たって、機体が見つかったらしい。 そしてようやく数日後に、死亡が確認されたんだっけ……。 私はあの日の朝食のことを思い出していた。 「小鳥遊家の次期当主は時生さんがなるはずでした。ですが不慮の事故で、それは叶わなくなった。ですから祐氏は、唯一血のつながった息子である葵君を呼び戻したわけです」 「呼び戻した、って一緒に暮らしてなかったんですか?」 「はい。彼は母親の親戚のもとに引き取れていました。因みに母親の方は、2年前に他界しています」 「小鳥遊さんはどうして葵君のことを、引き取らなかったんですか?」 「正妻に気を使ったのでしょう。それに後継者は一人いれば十分ですからね」   後継者が亡くなった途端、いままでほっといていた青を呼び戻した。 100%自分の都合で……それでも親なの? 「最低ですね、小鳥遊家の当主って」 「ええ、そうかもしれません。ですがこういった話はよくあることですよ」   よくあること? 悪いけど私には理解できない。 あの日、小鳥遊家の葬儀中継を見ながら私はなに気なくこう呟いた。 ああ……出来ることなら、こんな家の子に生まれたかったなあ。 すると青は少し寂しげにこういったんだ。 こんな家のどこがいいの? って……ほんと、あの子のいう通りだ。
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