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「先日、私は葵君と会いました。理由は小鳥遊家に入るよう説得をするためです」
「あの子はなんて?」
「あの家に入るくらいなら死んだほうがマシだ、といわれました」
そりゃそうでしょうよ。
青にとって小鳥遊家の当主は、父親でもなんでもないのだから……。
「諦めたほうがいいんじゃないですか?」
「いいえ、そういう訳にはいきません」
「葵君が小鳥遊家に入るとは思えませんけど……」
「たしかにそうですね。だからこそ貴女の力が必要になってくるわけです」
「私の?」
「はい。葵君は貴女のいうことなら聞くはずです」
「まさか……」
「いいえ、彼にとって貴女は特別な存在なんですよ」
特別な存在?
私と青の関係――ご主人様と性奴隷。まあ、特別な存在といえば特別な存在だけどさあ。
「買い被りすぎだと思いますけど……」
「そんなことはない。貴女といるときだけは、あの笑顔を忘れた少年が幸せそうに微笑むんですから……一体どんな魔法を使ったんですか?」
笑顔を忘れた少年って……あの根明な青が?
私が知ってるあの子は、いつも無邪気に笑っていたけど……。
「笑顔を忘れたって、どういうことですか?」
「いったままの意味です。母親が亡くなって以来、彼は笑顔をみせなくなった。まあ、思春期の子にはよくある話ですよ」
私の問いかけに、川崎さんは業務報告書を読むように事務的に答えた。
まあ、当然といえば当然だろう。この人にとっては只の仕事なのだから。
でも私にとって青は……。
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