人生最高の夜

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銀座通りは相変わらず、待ち合わせやカップルたちで溢れている。 このあたりは幸せな人ばかりだ。少しはおすそ分けしてほしいもんだわ……。   私は溜め息交じりで手近なベンチに腰を下ろした。 そして酔いに任せて、幾分重くなった瞼を閉じてゆく。 すると隣に誰かが腰を下ろしてくる気配を感じた。   ベンチは他にも沢山あるのに、なぜにわざわざ隣に?  ナンパだろうか……あり得なくもないが、可能性は低い。 なぜなら私は生まれてこのかた、ナンパされたことがないからだ。   因みに電車通勤にも関わらず、痴漢被害も皆無です。 これは親友の有紀にも話していない。っていうか誰にもいってない。 このことは墓場まで持っていく所存だ。 そんなことをあれこれ考えていると、隣の誰かさんが話しかけてきた。 「あんたみたいな良かおなごが、こげんとこで寝とったら危かよ」   発音がめちゃめちゃな博多弁。だけどその声はあの頃と変わらず、とても澄んでいた。
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