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「俺と別れてくれ」
はあっ、いまなんと? 驚きの余り声が出ない。
突然の出来事に目の前が真っ暗なる。
喉はまるで砂漠にでもいるかのように、からっからに干上がっていた。
でもそんな私のことなどお構いなしとばかりに、目の前の男は業務報告でもするかのように淡々と話を進めてゆく。
「実は中村専務のお嬢さんと、今度見合いをすることになったんだ。だから――」
別れの理由――それは上司の娘との縁談が原因だった。
断れば出世コースから外れる。逆にお受けすれば、輝かしい未来が待っている。
要するにこの男は、出世に目がくらみ私を切ろうとしているのだ。
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