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冷たいところがあるのは、以前から知っていた。
出世欲の強い仕事人間なのも知っていた。
だけどそういうところも全部ひっくっるめて、彼のことが好きだった。
「奈々には本当に悪いと思ってる」
そりゃ、そうでしょうよ。これを悪いと思わないないで、一体なにを悪いと思うのよ。
こういう時に、涙の一つでも流せれば少しは結果が変わるのだろうか?……だけど可愛げのない私は、そんな簡単なことが出来ない。
「そんな棚ぼたな出世の道に、一体なんの価値があるの?」
「俺は使えるコネは、なんでも利用する主義なんだ」
悪びれる様子もなく、サラッといってのける。相変わらずの開き直り体質。
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