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「じゃあ、いいじゃん。ほら、早く開けてよ」
「い、いま部屋がすごく散らかってるから……あっ、そうだっ! 近場に新しいカフェが出来たから、そ、そっちに行かない?」
「別に散らかっててもいいわよ。そんなこと気にする間柄じゃないでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「それにあんたの好きなデニッシュも買って来たんだから、寒い思いしてわざわざカフェなんかに行くことないわよ」
どうする? ねえ、どうすんの? 考えろ、考えろ、私っ!
取りあえずオートロックを開錠する。
そして有紀が部屋に入って来る前に、青のスマホへ緊急連絡&状況説明。
よしっ、テンパった頭で考えたわりには悪くない作戦だ。
私はそう思いつつ、オートロックを開錠した。
それと同時に素早くスマホに手を伸ばす。
メモリーから青の名前をタップして耳に押し当てると、呼び出し音が鼓膜に届いてくる。
それと同時に私の部屋にも同様の呼び出し音が響き渡った。
あっ! あ、あいつ、スマホ置いてってるし……はいっ、作戦終了!
私はがっくりとその場にへたり込んだ。すると玄関からドアが開く音が聞こえてきた。
「おっすー」
有紀が気の抜けた挨拶と共に部屋に入ってきた。
彼女はおみやげのデニッシュを私に手渡してくる。
そしてコートを脱ぎながら、テーブルの前に腰を下ろした。
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