85人が本棚に入れています
本棚に追加
男は稲光と雷鳴とともに突然アオの目の前に現れた。
漆黒の長い髪、透けるように白い肌、不思議な色の瞳。山の奥深くにある沼のような深い、深い碧。
綺麗な男だ。短い人生だがこれほど綺麗な男、いや、人を見たことがない。
鮮やかな着物を身に纏い、眩しいくらいに光り輝いている。肩には変な生き物を乗せていた。
男はアオに向かって手を差し伸べる。差し出された手の平は大きく、袖から覗く腕は逞しい。
迎えが来たのだとアオは思った。
とおちゃもかあちゃも、アオが幼い頃に迎えが来て行ってしまった。あの時は真っ黒な男たちだった。そして二度と戻って来なかった。
おれはこの金色に光り輝く男に迎えられてどこに行くのだろう。
男を見上げながらぼんやりと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!