奇食

味覚が敏感になるのだ。

おおよその麻薬の類いは人を痩せ細らすのに、大麻に関してだけは太ると言われているし、実際にそうだった。

笑える事に、オレの体重は日本に居た頃より増えた。

コンビニもファスト・フードもなく、単純な味付けの質素な食べ物しかない地域でだ。

まあ大麻が育つ場所だ。暑さは有るが山間部の高所にでも行かない限り寒くは無い。

それにやはり未開な土地柄か、カメラマンとしてはある程度の金になる絵が撮れる。

普通の神経の持ち主じゃ、顔を背けるタイプの絵だけどな。

世の中じゃ、そうしたモノにも一定の需要が有る。

お陰でオレは端くれでもカメラマンとして成り立っていた。

時には自分自身を被写体にもする。

『人を食った話だよ、昆虫その他雑食記』

何てふざけたタイトルのコラムを請け負っているからだ。

唯一、継続してやっているのはこの仕事だけか。教えないが割りは相当良い。

初めの内は、この仕事でも大麻には役に立って貰った。

メキシコのテキーラに、原料のリュウゼツランを食うボクトウガの芋虫を漬け込んだのは有名だよな。