奇食

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正しくはメスカルと分類分けされていて、瓶の首に塩と芋虫を乾燥させて粉にしたものが混ぜられて付いていた。ライムに振り掛け、かじりつつ飲むんだと。 オレもあっちを放浪した時に御相伴に預かった事が有るが、元がアルコール度数の高い酒だから味よりも喉を焼くキツさしか覚えていない。 それを写真採用してくれるツテの一つに話したら押し付けられた企画だった。 何でも前任者との連絡が付かなくなって困っていたらしい。 粟野玄人と言うペンネームでやっていた奴らしいが、生活はオレと大して違わない奴で連絡が取れなくなるのもしょっちゅう。一度原稿を落としているから次はないってのに、見事音信不通となったんだってさ。 文章は校正してくれるってのも約束してくれたんで、ゴネつつも引き受けた仕事だ。 オレだって定期的に手に入る金は嬉しい。で、それから毎月何度かの虫食いさ。 イナゴの佃煮位ならオレも日本で見た事が有る。 だがよ、それの倍は有るバッタが、油で炒められて塩のみのシンプルな味付けで出て来てみろ。引くわな、日本育ちじゃ大抵引く。 だからあらかじめ大麻を吸っておいた。幸せ者に成れるし、食うものが美味くなると知っていたからだ。 先ずは匂いを嗅ぐ。エビを塩焼きにした様な匂いだった。それに古い油の香りが絡むが、大麻のお陰か普段なら胸焼け確定の匂いも新鮮な初めて嗅ぐ芳ばしさに感じられた。
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