奇食

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食用昆虫研究会って所の監修および丁寧な手解き付きでやった回だが、日本にいる芋虫を食ったと言う事で反響が大きかった。 それで今回のこの仕事な訳だが、極上物の芋虫が食えるとの情報よりも大麻が有るから来た様なもんだ。久し振りに吸えれば何だって美味くなる。束の間、不味い食生活ともおさらばだ。 秘境と言うべき奥地にひっそりと在るその集落は、はっきり言って陸の孤島。 まずもって舗装どころか、整備された道が無いし、今進んでいる所も獣道としか思えない。 うっすら草が分かれているかな程度の道らしき場所を進んでいる。 ガイド兼通訳の男が、元々その集落出身だとかで足取りに迷いがないのが救いどころ。一人じゃ迷子必至の道行きだ。 途中一泊した夜に、寝袋の中から見上げた空の綺麗さには息を飲んだ。 標高が少しばかり高い分、宇宙に近いのも有るんだろうか。木々の隙間から降って来る様な輝く星が無数に見えて、夜空とは人工の明かりが無くとも明るいのだなあと痛感する。 何時ぶりなのだろう、空をこうやってゆっくりと見上げるのは。 餓鬼みたいに寝袋の中から手を伸ばして、星を掴み取る真似事をした。 つい、無心にやってみたくなる。それほどに美しい眺めだった。 オレの子供じみた仕草を笑ってから、通訳がしんみりと言う。 「星を見ると、私達が生きている不思議を思います」
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