第2章 一年間よろしく

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第2章 一年間よろしく

「迎えにくるまで待ってるんだよ」  小学生達と小学校正門前で別れ、中学校の校舎を目指し、時間にやや急かされながら歩む彩人達。 「クラス分けどうなってっかな。また4人一緒のクラスなんねーかな」  始業式のメインイベント、クラス分けに期待を膨らませる琢磨。昨年、琢磨、彩人、幹彦、万里の4人が同じクラスに分けられた奇跡をもう1度起きるのを望んでいるようだ。 「さすがに無理だろ。もし、同じだったらクラス分けが作為的に行われたとしか思えない」  期待に胸を膨らませてる琢磨に、幹彦はあり得ないと断じた。 「せめて、仲良い友達と一緒がいいな。たっちゃんとか村松くんとか。まあ、ヒロシでもいいか」  万里は、【千木良 辰巳=チギラ タツミ】、【村松 典明=ムラマツ ノリアキ】、【栗山 宏=クリヤマ ヒロシ】、2年時同じクラスで友達になった3人の名前を挙げる。 「1人ぼっちにならないか心配」  新たに人間関係を築き直さないといけないのか、と人見知りな部分がある彩人はため息をつく。 「彩人さん、それフラグっていうんですよ」  彩人の発言に笑う匠子。  5人は楽しそうに、ワイワイと話に花を咲かせる。しかし、その片割れ、望は青ざめた表情で5人の歩に合わせていた。 「え、大丈夫!?」  彩人は、望の変化に気づいた。 「さっきまで大丈夫だったんですけど、急に体調が」 「久しぶりに歩いて疲労してるんだろう。とりあえず、学校までもう少しだ。いけるか? 望」 「はい」  望を鼓舞して、幹彦は彼に体を支える。 「おんぶしようか?」 「いや、さすがに……」  万里の提案に戸惑う望。青ざめていた顔は若干紅潮した。 「これから一緒に歩いて行くんだ。甘やかしちゃあ、駄目だろ」 「そう、それです」  なんと断ろうか考えていた望は、幹彦の言葉を引用にして断った。 「代わりに俺をおんぶするのはどうよ」  万里の背中に飛びつく琢磨。 「歩きなさい」
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