第2章 一年間よろしく

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 ーーーーーーーー。  一行が校門前に辿り着いたのと同時に予鈴が鳴り響いた。 「遅刻決定だね」  万里は、クラス分けの結果が貼り出された仮設掲示板の前、校舎入り口に誰もいないのを見て呟いた。 「ごめんなさい。僕の所為で」 「違う違う! 望は悪くないよ! 匠子と琢磨の所為だから」  万里は遅刻の元凶を横目で睨む。 「もうそんなことは忘れてクラス分け見ようぜ」  琢磨は万里の発言を意に介さず、仮設掲示板へ走っていった。 「俺のクラスはどこかな」  琢磨は、名前の順で縦に羅列する名簿を下から眺めていく。 「俺、3組だ。あ、ミキヒコとヒロシもいる」 「私とノリアキくんは4組だね」 「あったぞ。彩人。千木良さんと同じ1組だ」 「よかった~。1人でなくって」  胸を撫で下ろす彩人。 「なぁ。空木って名字、彩人以外で聞いたことあるか?」  幹彦が指さすほうに注目する一同。  空木彩人の下に空木菖蒲と連続して同じ名字が並んでいた。 「空木…ブドウ?」 「アヤメだって」  万里の間違いを指摘する琢磨。 「俺達と同じ学年にはいなかった、って言い切る自信はあるな。転校生だろ」  特に興味なさそうに琢磨は下駄箱のほうへ歩いていく。   それぞれ自分のクラスと出席番号を確認し、下駄箱に向かう。 「望は僕が保健室につれてくよ。1組のほうが保健室に近いし」  と言って中履き履き替えた彩人は望を連れて幹彦達と別れた。 「続きそう?」  まだ青ざめている望に、これから歩いて登校できそうか問うた。 「そうですね…意気込みはあるんですが、皆さんに迷惑かけるなら控えた方がいいかなって思ってます」  望は彩人達を遅刻させてしまったことに責任を感じているようで、青ざめている顔にさらに影がかかっていた。 「体力がないのはしょうがないよ。時間を要するしね。それに、これぐらいみんな迷惑なんて思ってないよ。今回の遅刻だってタクマやショウコのせいだし。さっきバンリが言ってた通り、集合時間に2人が間に合ってたら今日は遅刻してないよ。またおいでよ」 「はい。ありがとうございます」  彼から影がひいたのを確かに感じ取った彩人は、自分が励ます側に立っているのだと実感したのと同時に自分がこちら側に立っている違和感と時間の速さに驚く。
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