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「失礼します」
保健室の戸を開ける彩人。中学3年目にして初めて入ったのではないと思うぐらい彩人には保健室は縁のない場所だった。
「あら、あなたは空木彩人くんね」
彩人は感心する。ほぼ対面するのは初めての養護教諭が自分の名前を覚えていることに。見た目と反し真面目な先生なのだと。
【木村 艶花=キムラ アデカ】。濃い化粧、腰まで伸びる茶髪に染められた髪、紺色のワイシャツの胸元はバッチリ開けている養護教諭の名だ。彩人が思う通り、中学校に勤める者としてふさわしくない格好をしていた。
「先生、登校中に体調崩れた後輩を連れてきました」
「学校が始まって早々不運ね。顔色を見せて」
望の顔を覗き込む養護教諭はわざと胸元を強調してしゃがむ。眼のやり場に困った望の眼は右往左往。
「ほら、こっちを見て」
診察ができないと理由付けて望の視界を固定させて恥ずかしがる彼の反応を養護教諭は楽しんでいた。
「じゃあね。ノゾム」
望を養護教諭に任せて彩人は保健室から退出した。
自分のクラスを目指し階段を上る彩人。
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