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「岡部仁(おかべ じん)。名前ぐらい知ってる」
「人の名前を軽々しく呼び捨てするな」
仁は即応する。
「まあまあ」と慎一郎は2人の間に割り込んだ。
そうしないと彼の姪は一言も二言も言い返しかねないからだ。
「仁……いや、岡部君。姪が失礼した。裕、人の話の腰は折らない。お前は言い返す前にまず人の話を聞くクセを身につけなさい。今のお前の態度では、我が校はもちろん、どこへ行っても通用しない。学べるものも学べなくなる」
お口にチャックしろ、ってのね。わかったよ。
裕は沈黙をもって答えた。
はあ、と小さくため息をつき、慎一郎は二人に向き合う。
「岡部君。君に来てもらったのは他でもない。君は当校でも1,2を争う英語の使い手だ」
「お褒めを頂く程のものじゃありません」
「いや、あるのだよ。その君に、たっての願いがある」
「何でしょう」
「そこの不肖の姪に、英語のレクチャーをしてやってはもらえないだろうか」
「えーっ!!」
裕は叔父の言葉の途中ですっとんきょうな声を上げた。
「叔父さん、何? 何言っちゃってんの?」
姪のことはサクッと無視して、慎一郎は続ける。
「君は我が校の入試でも協力を願っている。実力は折り紙付きだ。付け焼き刃でどうにもならない姪の英語力に活を入れてやって欲しい」
「先生、先生はホントに俺をかいかぶりすぎているようですが、俺に何ができると……」
「君にしかできない」
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