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「…なんか、悪かったな」 まだかなり残っていたらしいビールのせいで びしょ濡れになり逆上するタケさんに 私は頭を下げることなく 間に入ってくれた丸山さんにだけ お礼を言って火村さんと喫煙所に逃げ込んだ 「それ吸ったら、部屋戻って、寝て」 さすがに酔いも覚めたのか 静かに謝ってくる火村サンを 気遣う余裕はあまり、なかった あんまり長く一緒にいたら それこそ妙な噂を立てられてしまう そんな建前で 彼を遠ざけなければ とても冷静でいられそうになかった 本当は私だって 火村サンに触れたいその体温を知りたい 狂いそうなほど熱い その願いの炎に焼かれたとしても それをしないのは 火村サンは香澄を大切にしているからだ その香澄の心の隙間に入り込んで 目先の快楽をしゃぶりつくして 巻き込まれる人間のことなど 考えもしなければ 香澄を守るつもりもない 責任のカケラもないタケさんが憎かった 否、それは私の偽善でしかなくて 火村サンから一番愛されているくせに 出会って二日、三日の男にも身体を許す 香澄の強欲さや魅力が 羨ましくて憎らしいだけなのかもしれない 襲ってしまえ、なんて 悪魔のような言葉が この荒れ狂う感情を鎮める ただ一つの答えのように思えて 決して正しくないのは分かっているのに 委ねてしまいそうで 目の前に火村サンがいる限り 何も収まりそうになかった
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