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ふわりと髪に触れた手に 反射的に違うと感じて 寝返りを打つふりをして 其処から逃れたあと 自分は寝惚けすぎていると ままならない思考の中で そう自覚した 一度目のお泊まりで すっかり心を許した私は 花田ー…柔くんに誘われるがまま 彼の家に泊まることが増えた その度に柔くんの家には 私のものが増えていく こうして お互いが空気のようになっていくのだなあと 恥ずかしいようなこそばゆいような気持ち を味わっていた矢先に 一緒に住まないかと言われた 会社に近くなるし 家賃も安くなる かつて彼が話した 明るい未来計画の一員に 選ばれたことが誇らしくて 悪い要素などひとつもなくて 私は二つ返事でそれを受け入れた 職場の女子達は思いがけず現れた恋敵を 血眼になって探していたし 大半の女子はそれさえも 障害にはなりえないと 変わらずアピールを続けていたが 柔くんの方が想像以上に 頑なに明確に彼女達を拒んだ そんなことで 評価が下がるわけもない彼は 結果職場のオアシスとして 崇め奉られるようになったが 私はそれらの感情に 一切の不安も抱かず彼と共にいることができた 事務であることで受ける はじめての恩恵を実感しながら 書類の住所を変更し さすが柔くんだ、と思う みんなの気持ちを柔らかくしてくれる人
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