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憂鬱な気持ちは陰鬱な朝を連れてくる
ぼんやりしていた私は朝から
マグカップを割ってしまって
本当に寝起きが悪いんだからと笑う柔くんの
今日帰りに買ってくるね
という言葉すら、不快に思えてしまう
今年の冬はどこそこへ行こうだとか
これは次のごみ捨ての日に棄てようだとか
二人でいる未来を当たり前のように
捉えている言葉たちが私の余裕を奪っていく
急に自分だけが
誰にも見えない透明な硝子の箱のなかに
閉じこめられてしまったようだった
柔くん助けて、と声をあげながら
私は笑っている
彼を裏切ることも
自分に嘘をつくことも辛くて
狡い私は誰にも干渉されないこの場所で
ただひとり、絶対に来るはずのない
人間を待っていた
来てくれさえすれば変わるのだろうか
変わるはずもなく
欲張りな私はその次も、そのまた次も
望んでしまうはずだった
あの頃のように
それに今更彼が応えてくれるなんて
確証どころではなく
可能性の低いことくらい、気付いていた
だから狡い私は柔くんの温かい手を
ふりほどけずに
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