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ダイニングテーブルに座って
ぼんやりとテレビを眺めていると
歯磨きをしにいった柔くんが
先程より少し目の覚めた顔をして
顔だけこちらに覗かせた
「そういえば、昨日帰り覗いたら
ポストの中すごいことになってたよ」
ポストを見忘れるのは
私の悪い癖だ
「ごめん、忘れてた」
「いいけど…玄関の靴箱の上に
置いといたからいるのだけ抜いといて」
俺はいらないから、と
洗面所に消えていった柔くんを横目に
玄関へと向かう
私はポストを見ないけど
柔くんは中身を見ない
チラシだろうが請求書だろうが
ゴミ箱へぽい、だ
何度目かにこの家に来たとき
たまたま電気代の催促の紙を見つけてしまい
問いただした結果がこうである
今では
ポストを覗く係と
中身をチェックする係で
うまいこと役割分担ができていた
いつものように靴箱の上に
ぐちゃ、と置かれたチラシ達をかき集め
抱えるようにしてダイニングへ戻る
ピザから始まり
最近近くに出来たマンション
子供向けサッカー教室
老人向けお弁当、2LDK、一軒家…
様々なものが
うすっぺらい紙の上で
色鮮やかに魅力的に描かれては、消える
ほぼ無意識に、順番に
それらをゴミ箱へ
移していた手が
ふと、止まる
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