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白い封筒 丁寧な文字で 私の名前が書いてある なんとはなしに 封筒を裏 返して 差出人を見た私は ぐらりと世界が揺れるのを感じた 差出人と呼ぶのは 少し違うのかもしれない 懐かしいあの場所 忌々しい そう思うことに決めた あの、場所 "S大映像研究会" 少し丸めの 丁寧に書かれた文字から 目が離せない 「どうして今更…」 呟いた言葉は 何故か大きく響いて 先程までの温かい気持ちが こつこつと重ねた柔くんとの三年間が 思い描けたはずの優しい未来が 急速に色を失っていく 今この瞬間という鏡が 大きくひび割れて崩れ落ちて 泡のように実態を失って消えていく ただ、残るのは、
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