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フライパンに落とした二つの卵が しゅわしゅわと音を立てて 白く濁っていく様を ぼんやりと眺めていたら 首の両側から、腕が、二本 にょきりと生えてきた 「おはよ」 ずしりと重力を自覚するのと、ほぼ同時 甘くて低い柔くんの声が 頭の上から降ってくる 「おはよー」 返事をしながら見上げると 半分も開いてない瞳が 優しそうにふわふわと微笑んで (ただ眠たいだけかもしれないけど) こちらを見つめていた 柔くんー…花田柔人 と暮らしはじめてもうすぐ三年になる 彼と出会ったのは その一年前の 11月から雪が降るような今年からすれば ほんのすこしあったかい でもやっぱり寒くて寂しい冬の日だった
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