月夜の晩に

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歩き回ること、数分。部屋の中に変わった様子は無いようだ。 「……何も取られたりはしてないけど、誰かが部屋に入ったのは間違いない。……なぁ、三好。付き纏われてるのは俺じゃなく、お前なんじゃないか?」 確信を得た杉野の視線が三好を貫いた。三好もまた、付き纏われているのは杉野ではなく、自分なのではないかと薄々気付き始めていた。 というのも、思い当たる節が無い訳ではないのだ。杉野が読み上げた文面。あれが見えなかったモノを照らし、" もしかしたら…… " を導き出した。だが、まだ姿はシルエットのまま。 「何か思い当たる事がありそうだな」 「……大したことじゃないと思ってたんだが……おかしな事があって……」 三好には以前から引っ掛っている事があった。それでも、小さいことは気にしない性格なのもあり、深く調べる事もせず、放置していた。しかし、最近どうにも変なのだ。今もだが、不可解な出来事ばかり身の周りで起きている。 先週も、これまで兄弟のように仲の良かった後輩から「もう呑みに誘わないで下さい」と突如告げられた。後輩は目上の人間を敬う事はあっても、こんなことを自ら言う男ではない。そのくらい、三好は後輩を信頼していた。だからこそ、ショックは相当なものだった。
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