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「何だよ、急に」
「……それは……」
三好同様、後輩自身も戸惑っていた。三好の顔色を窺(うかが)いながら、ゆっくりと口を開く。
「" あの人" に聞いてください。……と言うか、聞いてないですか?」
" あの人 "
この人物こそ、三好が引っ掛かっている事の張本人である。
「前にも言ったが、そんな奴は本当に居ないんだって! 噂だよ、そんなの」
「俺、" あの人 " に直接会いました!」
「は? 何言ってんだ、お前……」
「まー、まー。……歳は、三好さんと変わらないくらいと言ってましたけど、凄い美人じゃないですか! ……事情も聞きました。色々あって、認められない事も。……先輩、水臭いですよ。俺にまで隠すなんて」
「ちょっと待て! ……いいか。《 内縁の妻 》なんか作るなら、とっくに嫁さん貰ってる!! お前がどこの誰と会ったかは知らないが、本当に内縁の妻なんか居ないんだ。頼む、信じてくれ!!」
深々と頭を下げる三好。信じてほしい、その一心で。
後輩の顔に困惑が広がっていく。
彼は「すみません……。俺、どうしたらいいか分からないです」と三好に頭を下げると、足早に立ち去った。これ以来、後輩から三好にプライベートで声をかけることも無くなった。
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