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久々の再会というのもあり、居酒屋で呑みながら、近況報告を互いにした。黙って話を聞いてくれたトワコに酒が進んでいたのもあり、「お前と付き合ってた頃は楽しかった。戻りたいな、あの頃に」と昔を思い出し、二人共 そう話したのだと言う。
「……それをトワコは本気にしたのか……。あー、どうすんだよ……」
「参ったな……」
「昔から、アイツ……思い込みが激しい所があったもんな」
「あぁ。他の女と話しただけで、"浮気者!" って言われたよ。……別れたのは、それが原因だった」
話に夢中で、テレビのチャンネルはサスペンスのまま。物語も佳境へ差し掛かり、犯人を追い詰める場面になっていた。
―― ……ガチャガチャ。
二人の耳に有り得ない音が届き、無言で見つめ合い、目で会話をした。
「ドアの鍵が開く音がしなかったか?」
「俺も聞こえた」
恐怖で息が詰まる。嫌な予感に心臓も警鐘を鳴らす。
ドクンドクン……ドクンドクン……
スローモーションで時間が流れていく。ゆっくりと解錠され、開かれるドア。カツカツと鳴るハイヒールの足音。
「かーごめ、かごめ。月夜の晩に、ツルとカメが滑った。……後ろの正面、だーれ?」
かごめの童謡を歌いながら現れたのは……
部屋の光を浴び、手元に輝くモノを持ったトワコだった。
「こんばんは。" 内縁の妻 " が会いに来ましたよ。ずっと、貴方たちを待ってたのに。他の女に手を出すなんて酷い人たち。……だから、みんな別れさせたの。そうすれば、私の元に帰ってくると思って。さぁ、行きましょう。《 私たちだけの世界 》 へ」
「う、うわぁ!? く、来るな!!!!」
「うわぁああー!!!!」
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