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ガラガラ……
月夜の晩にキャリーバッグが路面を転がる音がする。
重い荷物の様だ。何度も何度も、進んでは音が止む。
「……待つのは疲れた。だから、会いに行ったの。手紙で伝えたのに、逃げようとするなんて。でも、大丈夫。これからは、三人で ずっと一緒に居られる。……愛してる」
月が照らす、血塗られた道筋。
この先は高い崖へと繋がっている。
女は自身の足にロープで巻かれた大きな岩を括りつけ、ニヤッと口角を上げると、キャリーバッグを大切に抱きしめるような形で、そのまま真下へ身を投げた。
深く深く、三人は沈んでいく。
永遠の愛という名の海の底へ………
【完】
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