月夜の晩に

14/14
前へ
/14ページ
次へ
── ──── ガラガラ…… 月夜の晩にキャリーバッグが路面を転がる音がする。 重い荷物の様だ。何度も何度も、進んでは音が止む。 「……待つのは疲れた。だから、会いに行ったの。手紙で伝えたのに、逃げようとするなんて。でも、大丈夫。これからは、三人で ずっと一緒に居られる。……愛してる」 月が照らす、血塗られた道筋。 この先は高い崖へと繋がっている。 女は自身の足にロープで巻かれた大きな岩を括りつけ、ニヤッと口角を上げると、キャリーバッグを大切に抱きしめるような形で、そのまま真下へ身を投げた。 深く深く、三人は沈んでいく。 永遠の愛という名の海の底へ……… 【完】
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加