16人が本棚に入れています
本棚に追加
帰れたさ、と思いがけず優しく言われて。
うん、と晴明の肩に博雅が顔を埋めた。
抱きしめてくる晴明の肩越しの夕空に、早い一番星が浮かぶ。
いつまでも主を放さない陰陽師に 、北斗が焦れて冠を噛んだ。
「あ、こら、止めろ!」
晴明の腕が解かれる。ふふ、と笑って博雅が立ち上がった。
「俺達も、帰ろう」
「そうだな、帰ろう」
北斗の手綱を取って博雅が歩き出す。晴明が横に並ぶ。
二人なんとなく微笑みあって、都への道を辿った。 春の夕暮れであった。
了
最初のコメントを投稿しよう!