第1章

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帰れたさ、と思いがけず優しく言われて。 うん、と晴明の肩に博雅が顔を埋めた。 抱きしめてくる晴明の肩越しの夕空に、早い一番星が浮かぶ。 いつまでも主を放さない陰陽師に 、北斗が焦れて冠を噛んだ。 「あ、こら、止めろ!」 晴明の腕が解かれる。ふふ、と笑って博雅が立ち上がった。 「俺達も、帰ろう」 「そうだな、帰ろう」 北斗の手綱を取って博雅が歩き出す。晴明が横に並ぶ。 二人なんとなく微笑みあって、都への道を辿った。 春の夕暮れであった。 了
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