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帝(みかど)から安倍晴明(せいめい)にお召しがあったのは、
春も終わる頃。
桜はとうに散り、
吹く風は暖かいというよりは爽やかと感じられる季節になっていた。
清涼殿に着いた晴明が殿上の間に入っていく。
櫛形窓の向こうから女官達の囁く声がする。
「ほら、
あれが今うわさの安倍晴明さま」
「まぁ、
なんと凛々しい殿御振り」
「あの背の高いこと」
「目じりの黒子(ほくろ)が愛らしい」
浅緑の束帯に包まれた長身がゆっくりと歩みを止める。
……愛らしいとは恐れ入るな。
思わず指を目元に持っていくと、
ざわめきが高まった。
「あれ、
あちらに聞こえたような」
「恥ずかしいこと」
一段高い処にある櫛形窓はこちらからは覗けないと分かっていて。
くすくすと笑い崩れる声がまったくもってかまびすしい。
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