第1章

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「鞍にとり憑くものを呼び出さなくては、 この晴明にもどうにもなりません」 「して、 いかにして呼び出せば良いのじゃ」 「この鞍に乗って馬を走らせるしかありますまいな。 どなたか乗って下さる方は?」 周囲を見回すと、 視線がすっと外される。 モノの憑いた鞍など誰も乗りたがらない。 「なぜ主が乗らぬ?」 下手(しもて)から声がかかる。 「私では怖れて出てきませぬ」 ……あのような事を言い訳がましい。 所詮は卑しい陰陽師、 使えぬ奴よと聞こえよがしの声に、 隅に控えていた博雅が腰を浮かす。 隣の公達に袖を引かれて不承不承座りなおした。
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