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「鞍にとり憑くものを呼び出さなくては、
この晴明にもどうにもなりません」
「して、
いかにして呼び出せば良いのじゃ」
「この鞍に乗って馬を走らせるしかありますまいな。
どなたか乗って下さる方は?」
周囲を見回すと、
視線がすっと外される。
モノの憑いた鞍など誰も乗りたがらない。
「なぜ主が乗らぬ?」
下手(しもて)から声がかかる。
「私では怖れて出てきませぬ」
……あのような事を言い訳がましい。
所詮は卑しい陰陽師、
使えぬ奴よと聞こえよがしの声に、
隅に控えていた博雅が腰を浮かす。
隣の公達に袖を引かれて不承不承座りなおした。
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