第1章

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「どうにもならぬのか」 帝の声に公卿らがざわめく。 「このままでは、 なりませぬな」 きっぱりと言い切る晴明に、 周囲が鼻白んだ。 「私が」 沈黙を破って立ち上がったのは博雅。 無言で見上げる晴明に、 軽く肯いてみせた。 しばし後。 水浅葱の狩衣に着替えた博雅が庭に愛馬を引き出してきた。 名は北斗。 庭の見える紫宸殿の広縁に女官達がどっとばかりに押しかける。 格子戸を僅かに開けて、 その隙間から博雅を一目みようと押し合った。 「まぁ、 あのお姿の美しいこと」 「淡いお色が良くお似合い」 「あら、 私は若緑の方が似合うと思う」 いや紫だ、 梅染だと軽い口論が始まる。
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