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「しっ、
主上(おかみ)よ」
年かさの女官の声に格子の内がやや静まる。
「ところで何が始まるの?」
「ものの憑いた鞍に、
博雅様がお乗りになると言う話」
なんと恐ろしいことを、
と再びざわめきが高まる。
ああ、
と事情通の女官が笑った。
「昨日親王様がお乗りになったと言うアレね」
いい気味、
と声を潜めてもう一人。
「あたし嫌いよ。
いやらしいんだもん」
くすくすと漏れる意地の悪い笑い。
それよりも、
と心配げな声。
「博雅様は大丈夫なの?そんな鞍にお乗りになって」
浮ついていた空気が、
しんと静まる。
「……大丈夫よ」
桜の文様の唐衣をまとった女官がきっぱりと言う。
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